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かながわ福祉ビジョン2040

誰もが「自分らしく生きられる社会」を目指して

 
2040年、私たちの社会はこれまでにない人口構造の変化に直面します。
少子高齢化による人口減少が進み、これまでの発想では立ち行かなくなるこれからの社会。
だれもが何らかの「生きづらさ」を抱える時代だからこそ問い直したいのです。

「私たちは、どんな社会に暮らしたいですか?」

『かながわ福祉ビジョン2040』は、私たちかながわ福祉サービス振興会の創立25周年という節目に策定した未来への羅針盤です。
単なる福祉の枠にとどまらず、高齢者や障がいのある方を含むすべての人が、住み慣れた地域で幸せに暮らせる社会のあり方を、行政・事業者・住民がともに考え、実現していくための道筋を示しています。


背景にあるのは、「縮減する世紀」とも言われる時代の大きなうねり。
その中で、「人間性保障」――誰もが自分らしく、豊かに生きる権利を守り、支える社会の構築を目指すという、私たちの強い意志がこのビジョンに込められています。

未来をともにつくるために、今、私たちができることは?
このビジョンが、未来を見つめ、考えるための一助となれば幸いです。

ビジョンの基本的な考え方~私たちからの6つの提言~


私たちが提言する6つの柱は、ビジョンの理念を具体化し、社会全体で福祉の未来を拓いていくための具体的な施策と方向性を示したものです。
従来の「福祉」を概念を再定義し、人生100歳時代を誰もが楽しみ、選択肢にあふれる社会を実現するための提案です。

1) 頼り合える社会 ~誰もが自分らしく生きるために~(地域共創)


「頼り合える社会」とは、誰もが自分らしく生きられるよう、お互いを信頼し合い、支え合う社会。
支える側・支えられる側という一方向の関係ではなく、誰もが必要なときに自然と頼り、頼られる
――そんな相互のつながりを前提とした社会です。

固定的な家族像や「自己責任」にとらわれず、多様な暮らし方を受け入れる柔軟な地域へ。行政・事業者・住民がそれぞれの役割を生かしながら、「公・共・私」が調和する仕組みを共に築いていきます。
この支え合いは、「奉仕」や「犠牲」によるものではなく、自分の幸せや安心と地域の課題解決とが自然につながる関係性の中にあります。

誰かの困りごとが、いつかの自分の安心につながる。
そんな、あたたかな連携が息づく未来を、私たちは描いています。

 

2) 「福祉サービス」から「生活サービス」へ(新しい福祉の創造)

 

病気や障害といった特定の困りごとにとどまらず、地域住民一人ひとりの「生活ニーズ」に目を向けるという発想の転換が必要です。
生理的な欲求や安全の確保から、つながり・自己実現までを含む「暮らしの質」を高めるサービスへ。それは、福祉を限られた人のためのものではなく、誰もが必要とする生活のインフラと捉え直す視点です。

高齢・障害・子どもといった行政の縦割りを越えて、住民・事業者・行政など地域の多様な主体が手を取り合い、「困っている人」だけでなく「地域で共に生きる人」として、互いを気にかけ合う社会へ。
そんな共創によって、誰もが心豊かに暮らせる地域づくりを目指します。

3) 学び合いがつむぐ「共にある心」

 

 地域住民・団体・事業者が互いの存在を知り、学び合いながら、違いを認め合い、支え合う関係を育んでいくこと。それこそが不確実な時代において今、もっとも求められている地域の力です。

人と人との距離が問われたコロナ禍を経て、私たちは今、再び「つながる力」の大切さに気づいているのではないでしょうか。大切なのは、誰かを「助ける」「助けられる」という一方通行の関係ではなく、日々の暮らしの中で自然と交わされる学びや対話の積み重ねです。

知らないことを知ることから始まる理解。
偏見や思い込みがほどけたとき、地域の課題も「誰かの問題」ではなく「私たちのこと」になります。
世代や立場を超えた学び合いが、「共にある心」を育て、誰もが安心して関われる地域の文化をつくっていきます。

4) 人を育て、地域を育てる

 

変化の激しい社会において、地域に眠るさまざまな人や資源に光を当てながら、倫理観や共感を基盤とした「ともに生きる地域」を育んでいきたい。

福祉を専門職だけのものとせず、子どもから大人まで、すべての人が学校教育や社会教育、日々の暮らしを通じて学び合い、道徳や人間関係、人生哲学といった「人としての力」を高めていく。そうした「人づくり」が、地域全体で自然に育まれることが、持続可能なまちづくりの基盤となります。

地域の課題を誰か任せにせず、「自分ごと」としてとらえること。そして、多世代の人々が出会い、気づき合い、支え合う機会を広げていくこと。
その積み重ねこそが、人と人との信頼を深め、地域をより豊かであたたかな場へと育てていく力になるのです。

 

5) 行政よ、事業者よ、プラットフォームビルダーになれ !

 

住民が主役となる社会の「土台」をつくるには、行政が単なるサービス提供者から脱却し、地域の多様な主体が自ら動き出せる「場」や「仕組み」を支える黒子役=プラットフォームビルダーへと進化することが必要です。
今、求められているのは、行政がすべてを担う時代から、住民とともに考え、ともに行動する「共創と自治」の時代への転換。行政はその基盤を整え、つながりや協働を生み出す後押し役としての役割を果たしていくべきです。

また、事業者も「福祉サービスの提供者」にとどまらず、地域に眠る人的・社会的資源を活かしながら、住民の多様な生活ニーズに応える連携と共創の担い手として、積極的に地域づくりに関与することが求められています。

6) 私たちが変わるために大切なこと

 

私たちが変わるために大切なことは、変化を恐れず、前向きに一歩踏み出す意識と姿勢を持ち続けること。
私たちは、「意識が変われば、社会も変わる」と信じています。

たとえば、年齢に関係なく新しいことに挑戦する「チャレンジ精神」。若い世代と関わり、互いに学び合うなかで、自分自身の可能性にも社会の可能性にも気づくことができます。また、日々の暮らしの中で人生を楽しむ心も大切です。家族との団らんや地域でのふれあいを通じて、心豊かに、健やかに生きること。それは、自分を大切にすることであり、まわりの人への優しさにもつながっていきます。

そして、忘れてはならないのが、「おかげさまの心」。
今ここにいる自分は、多くの人の支えの上に成り立っていること。その気づきと感謝の気持ちが、支え合いの輪を自然に広げ、地域社会の根っこを育てていきます。
こうした小さな意識の変化が、自己責任を超えて、多様な価値観を認め合いながら「ともにある」ことを実感できる未来への一歩になるのです。


 

ともに未来をつくるために

ここまでご紹介した6つの柱は、2040年のかながわ、そしてその先の未来を見据えた「ともにある社会」への道しるべです。
支え合い、学び合い、育ち合いながら、多様な人々がつながり合う。その一歩一歩が、誰もが安心して暮らせる地域をかたちづくっていきます。
福祉は特別な誰かのものではなく、すべての人の暮らしの基盤。
だからこそ、私たち一人ひとりがこのビジョンを「自分ごと」として捉え、できることから動き出すことが、未来を変える力になります。

かながわの福祉を、もっと自由に、もっとしなやかに。
私たちかながわ福祉サービス振興会は、このビジョンの実現に向けて、皆さまとともに歩み続けます。

 

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